相続・遺言コラム
2022.01.31
亡くなった人の権利証はどうなるの?
- 相続手続き
人は生まれてから亡くなるまで「権利能力」があり、
様々な権利を取得することができます。
その様々な権利の中の一つに不動産があります。
不動産を売買や相続、贈与などで取得すると
権利者として登記され、権利証(現在の登記識別情報)が発行されます。
この権利証(登記識別情報)は、
次に売買や贈与で不動産を手放すときに必要になります。
そして無事登記が完了すると権利のない、ただの紙切れになるのです。
では、不動産の権利を持っている人が亡くなったらどうなるのでしょうか?
不動産所有者が亡くなった場合、権利証(登記識別情報)は無効になる!?
冒頭にも書きましたが、
民法上「権利能力」が認められるのは
人が「生まれてから亡くなるまで」の期間です。
亡くなってしまうと、権利能力は失われその不動産の所有者ではなくなります。
所有者ではなくなるので、権利証も無効となります。
しかし権利証が無効になったからといって、早々に処分していいものでしょうか?
不動産所有者が亡くなった場合の不動産登記
不動産所有者が亡くなると、相続登記をします。
※令和4年1月時点では相続登記は義務ではありませんが令和6年4月1日より相続登記が義務化されます。
一般的に不動産の所有権を移転するときは権利を失う人の
権利証(登記識別情報)の提出が必要です。
しかし、不動産の所有者が亡くなった場合の相続登記手続きでは、
原則、亡くなった人の権利証の提出は不要なのです。
※相続登記で準備するものはこちら
不動産登記の申請人
例えば、売買で不動産の所有権移転をする場合、
登記申請の権利者と義務者はこのようになります。
権利者 | 不動産の買主 |
義務者 | 不動産の売主 |
何となくイメージできると思うのですが、
売主は不動産の所有権を渡す義務がある。
買主は不動産の所有権をもらう権利がある。
という感じで、権利者と義務者となります。
権利を失うからには、厳格な本人確認と意思確認が必要です。
それを証明するために義務者は所有権移転登記の際、
権利証(登記識別情報)を提出するのです。
しかし、相続による所有権移転登記では
この権利者・義務者という概念はなく、「相続人」という立場で登記申請していきます。
なぜなら、相続は、人が亡くなったことにより当然に発生するもので、
義務が発生するということではないからです。
そうなるとどうでしょうか?
義務者ではないので、相続登記の際は、
亡くなった人の権利証(登記識別情報)の提出は不要なのです。
権利証(登記識別情報)の提出が必要となる場合がある
亡くなった人の不動産の所有権移転登記をするときでも
権利証(登記識別情報)の提出が必要となる場合があります。
①遺贈の登記申請をする場合
遺言書で相続人ではない第三者に不動産を贈与した場合、
「遺贈」による所有権移転登記をします。
この遺贈の登記は相続登記と何が違うのでしょうか?
それは「相続人ではない第三者に」というところがポイントです。
くり返しになりますが、相続とは人が亡くなったことにより当然に発生するものです。
しかしこの遺贈は、当然に発生するものでははく、
亡くなった人が生前に遺言という行為をしたことにより、発生するものです。
この行為の結果、義務者として登記申請に関与する必要があります。
義務者としてということは、権利を失うので権利証(登記識別情報)の提供をするのです。
②亡くなった人の住所が繋がらない場合
例えば、亡ふくおか太郎の登記されている住所が福岡県になっていたとします。
しかし、ふくおか太郎は引っ越しをしており、亡くなったときの住所が佐賀県になってました。
この場合
ふくおか太郎が、福岡県⇒佐賀県に住所を移転している証明書の提出が必要です。
通常、佐賀県で住民票の除票を取得して、「前住所」に福岡県の住所がのっていれば
住所が繋がったことになるので問題はありません。
しかし、亡くなったのがかなり前で、住民票の除票が取得できない場合等は
福岡県のAふくおか太郎さんと佐賀県のふくおか太郎さんは本当に同一人物なの?という問題が出てきます。
この場合に求められるのが「権利証(登記識別情報)」なのです。
簡単に言うと、住民票の除票は取得できなかったけど、
ちゃんと権利証持ってます!福岡県のふくおか太郎さんと佐賀県のふくおか太郎さんは間違いなく本人です!
ということを証明するのです。
まとめ
不動産の所有者が亡くなった場合でも「遺贈の登記をする場合」や「住所が繋がらない場合」
に権利証(登記識別情報)が必要です。
なので、少なくともその不動産の所有権移転登記が完了するまでは
大切に保管されておいてください。
また、ご遺族の中には想い出として大切に権利証を保管されている方もいらっしゃいます。
その場合、想い出として保管される権利証と、
権利があるものとして保管される権利証は混ざってしまわないように
きちんと分けて保管されることをお勧めします。
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