相続・遺言コラム

2024.02.29

遺贈と相続が混在した割合的包括遺贈の登記申請はどうする?

  • 登記

先日、もう一度司法書士試験を受験しなければならない。
という悪夢を見ました。
結構色んな悪夢をみますが、間違いなく悪夢ランキング1位でした。
目が覚めてそれが夢だと分かったとき、安心しすぎてちょっとウルっとしました。

さて、今日は遺言書関連のコラムです。
タイトルに「割合的包括遺贈」と書いてあり、
もしかするとあまり聞いたことがない言葉で難しく感じてしまうかもしれません。
「何だか結局よくわからなかったな、、登記申請どうしよう。。」
と登記の悪夢を見てしまわないように、できるだけ分かりやすくまとめてみました。

割合的包括遺贈とは

割合的包括遺贈とは、複数の人に割合を示して遺贈することです。
例えばこんな感じです。

一切の財産をAとBにそれぞれ2分の1の割合で包括して遺贈する。

財産を特定せずに、じぶんの財産をまるっと遺贈しますよ。割合はこのくらいずつね
という感じで遺言書を書くんですね。
この遺言書を残された場合、具体的な分割方法については財産をもらう人(受遺者と言います)が
分割協議をして財産を分け合っていくことになります。

実際にはどんな内容なのか、
今日は私が愛してやまない名探偵コ〇ンで具体例をみていきます。

突然ですが、アガサ博士が亡くなりました。
財産は現金と土地建物です。
現金:5000万円
土地建物価値:5000万円

アガサ博士は生前にこんな遺言書を書いていました。

私の一切の財産を灰原アイ、江戸川コナンにそれぞれ2分の1の割合で包括して遺贈する。
遺言執行者を毛利コゴロウとする。

 

(ま、どちらも実在しないので、登記できませんがそれは無視してください)
この場合、受遺者となった灰原アイと江戸川コナンは、
現金と土地建物の具体的な分割方法について話し合うことになります。
話し合った結果、実際に家に住んでいる灰原アイが土地建物を、江戸川コナンが現金をもらうことにしました。

ということは、最終的に土地建物の名義は灰原アイになりますが、
この場合、いきなりアガサ博士⇒灰原アイに名義変更することができません

じゃあどんな登記になるかというとこんな感じです。

まず、遺言者であるアガサ博士の意思に従って、灰原アイと江戸川コナンが2分の1ずつの持分で登記して、
その後、灰原アイと江戸川コナンの分割協議の結果を登記するこになります。

何故いきなり灰原アイ名義にできないかというと、こんな理由が考えられます。
・遺言者の意思をきちんと反映させる必要がある。
・遺言書の内容は第三者にはうかがい知れないため、遺贈の第三者対抗要件である登記を備えてから遺産分割協議をする必要がある。

では次はもっとややこしい、
遺言書の中に相続と遺贈が混在している場合の登記手続きについてみていきます。

相続と遺贈が混在している遺言書

相続と遺贈が混在している遺言書とはどんなものか、具体例でみていきます。

突然ですが、アガサ博士が亡くなりました。
財産は現金と土地建物です。
現金:5000万円
土地建物価値:5000万円

実は何と、灰原アイがアガサ博士の本当の娘でした。(勝手すぎる設定)
そしてアガサ博士は生前にこんな遺言書を書いていました。

私の一切の財産を灰原アイに2分の1の割合で相続させ、江戸川コナンに2分の1の割合で遺贈する。
遺言執行者を毛利コゴロウとする。

先程との違いは、受遺者が相続人(灰原アイ)と相続人以外(江戸川コナン)で、
それぞれに「相続させる」と「遺贈する」と書かれていることです。
相続と遺贈が混在してますよね。

この場合はどんな登記になるかというとこんな感じです。

1件目は遺贈の登記

先程と同様に、まず遺言者であるアガサ博士の意思を反映させる必要があるのですが、
その意思は遺贈と相続が混在している状態です。
遺贈と相続は登記原因も権利者義務者も違うので、一括で登記申請することができません
なので、まずは遺贈の登記申請をします。
遺贈と相続の登記どっちが先でもいいかというとそんなことはなくて、先に遺贈の登記をする必要があります

何で相続より遺贈が先?

先に遺贈の登記申請をすることにも理由があって、
相続の性質上、1つの不動産の一部だけ相続するってことができないからなんです。

もし1件目に相続登記をしてしまうと
相続による所有権一部移転となるため、この一部移転というのがダメなんですよね。
なので、先に遺贈の登記をして、残りを持分全部移転で相続登記をすることになります。

そして相続人以外の人への遺贈の登記は遺言執行者が定められている場合、遺言執行者が義務者となります。
なので、遺言執行者である毛利コゴロウと江戸川コナンで登記申請をすることになります、

2件目は普通の相続登記

2件目は拍子抜けするくらい普通の相続登記です。
ポイントは、名探偵(遺言執行者)の出番はないです。
遺言書の中で相続人に対して「相続する」と書かれている場合、
その相続財産は相続開始時に遡って受遺者のものになります
初めから受遺者のものなので、遺言執行者の出番はなく相続人が単独で相続登記の申請をすることができます。

「遺贈する」でも単独申請が可能に

以前は相続人に対する遺言書でも「遺贈する」と書いてしまった場合、遺言執行者との共同申請が必要でした。
しかし法改正により令和5年4月1日より、
相続人に「遺贈する」と書かれている場合でも、相続人で単独申請することが可能になりました。

単独申請と共同申請では準備する書類に大きな違いがあって、
断然単独申請の方が簡易的になっています。
詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

3件目は遺産分割の登記

これは先ほどの混在していないときと同様です。
まずは1件目と2件目で遺言者であるアガサ博士の意思を反映させてから、
灰原アイと江戸川コナンで分割協議を行った結果を登記してくという流れになります。
この遺産分割の登記は、遺言者の意思ではなくあくまで受遺者間での協議の結果を登記するものなので、遺言執行者は登記手続きに関与しません
なぜなら、遺言執行者は遺言書の内容をスムーズに実現すべく選任された人なので、
遺言に関係ないこには関与しないのです。

相続のことはふくおか司法書士法人へ

今日は相続と遺贈が混在している遺言書ではどんな登記申請が必要?についてまとまてみました。
遺言書の内容は本当に様々で、その内容に従って正しく登記申請をする必要があります。

遺言書に不動産の記載がある場合には、
是非ふくおか司法書士法人へご相談ください

 

 

相続・遺言問題でお悩みの方に
正確で確かな「解決力」を

相続・遺言手続センター福岡は相続問題をワンストップで解決する相続・遺言の専門家集団です。
相続には期限や法的判断の難しい手続きも多く、専門的な知識が必要とする場合があります。相続・遺言の専門家に相談することで大切な資産を守ることにも繋がりますので、早めの対策が望ましいです。

  • 遺産相続に関する手続きを一括して任せたい
  • 土地や建物の名義変更の手続きをしてほしい
  • 相続手続き、何から始めたらいいのか分からない
  • 終活として遺言書を作成したい

など、相続問題は置かれている状況に応じて様々。相談者ごとに、一番最適なプランで問題解決に当たります。
私たちは相続・遺言の専門家として、相続問題にお困りのご家族に寄り添い、今後安心した生活を送れるようサポートします。

事務所案内

初回相談費用無料