相続・遺言コラム

2022.04.05

遺産分割協議をやり直すことはできるの?

  • 相続手続き

すっかり春ですね。
事務所の面談室にも春らしい綺麗なお花が飾られています。


さて、今日のテーマは「遺産分割協議をやり直すことはできるの?」です。
一旦みんなで決めた遺産分割協議をやり直すことはできるようでしょうか?

遺産分割協議とは

相続人全員で亡くなった人の財産の分配について話し合う(協議する)ことを「遺産分割協議」と言います。
この遺産分割協議は相続人間での「契約」に当たります。

契約なので一般的には遺産分割協議をやり直すことはできますが、
やり直したい理由によって認められる場合と認められない場合があります。

遺産分割協議のやり直しが認められる場合

遺産分割協議をなぜやり直すのか?という理由によって、
認められる場合と認められない場合があります。

話し合いによる場合

相続人全員で話し合いがまとまれば、
遺産分割協議は何度でもやり直すことができます。

しかし、遺産分割協議をやり直すと、
税務上で贈与の扱いとなり贈与税がかかる場合があるので
事前に専門家に相談する等、慎重な対応が必要です。

詐欺・強迫・錯誤などによる場合

騙された、強迫された、勘違いしていたなどで成立した遺産分割協議は
細かい要件はありますが、詐欺・強迫・錯誤が認められると取り消すことができます。
取り消したうえで遺産分割協議のやり直しが可能です。

遺産分割協議のやり直しが認められない場合

遺産分割協議は「契約」ですが、やり直しが認められない場合もあります。

債務不履行による解除

債務不履行による解除とは、
たとえば、こんな場合です。

事例①

相続人:AとB

AとBの遺産分割協議によって
「不動産はAが相続しよう。その代わりAはBに対して300万円を支払うことにしよう。」とした場合、
AはBに300万円支払う義務があります。

売買契約で取り決めた内容であれば、Aがこの義務を履行しない場合、
Bは債務不履行を理由に契約を解除することができます。

しかし遺産分割協議の場合は債務不履行を理由に解除することができません。
解除ができないので、当然遺産分割協議をやり直すことができません。

不動産登記手続き

遺産分割協議をやり直した場合、やり直したタイミングによって
しなければいけない登記手続きが異なります。

既に所有権移転登記がされている場合

遺産分割協議をして、所有権移転登記までしたのに、
話し合いに等によって遺産分割協議をやり直した場合は、
一旦所有権移転登記を取り消してから
改めて所有権移転登記をする必要があります。

事例②

被相続人:X
相続人:AとB

 

1回目の遺産分割協議 Aがすべて相続する
やり直した遺産分割協議 Bがすべて相続する

1回目の遺産分割協議を元に
X⇒Aへの所有権移転登記をしました。
その後AとBでもう一度遺産分割協をしてBに不動産を相続させることにしました。
この場合、以下のような登記が必要です。

①X⇒Aへの所有権移転登記を取り消す
②X⇒Bへの所有権移転登記をする

まだ所有権移転登記はされていない場合

遺産分割協をしたけど、所有権移転登記をしていないうちに
話し合い等によって遺産分割協議をやり直した場合は、
新たに成立した協議内容で所有権移転登記をします。

事例③

被相続人:X
相続人:AとB

 

1回目の遺産分割協議 Aがすべて相続する
やり直した遺産分割協議 Bがすべて相続する

X⇒Bへの所有権移転登記をする。

注意点

遺産分割協議のやり直した場合の注意点です。

タイミングによっては認められない場合がある

遺産分割協議は契約なので、
基本的に相続人全員が納得したらやり直すことができます。
しかし、このやり直しは登記をしなければ第三者に権利を主張することができません。

事例④

被相続人:X
相続人:AとB

 

①1回目の遺産分割協議 Aがすべて相続する
②Aが甲に不動産を売却 甲へ所有権移転登記
③やり直した遺産分割協議 Bが全て相続する

 

この場合、甲とBは「先に登記をした方が権利を主張できる」という関係になります。

なので、③の遺産分割協議やり直しの前にA⇒甲に所有権移転登記をがされていた場合、
Bは遺産分割協議のやり直しによる権利の主張はできません。

取消権には時効がある

先にも記載したとおり、詐欺、強迫、錯誤による意思表示は取り消すことができます。
しかし、この取消できる権利には時効があります。

法定相続登記をした後に協議をした場合

似たようなパターンで、遺産分割協議による所有権移転登記ではなく、
法定相続登記による所有権移転登記をした後に遺産分割協議が成立した場合があります。

この場合、登記の方法が異なります。

事例⑤

被相続:X
相続人:AとB

 

1回目の法定相続登記 持分1/2 A 
持分1/2 B
法定相続登記後に行った遺産分割協議 Bがすべて相続する

この場合は、法定相続登記は取消せずに、A⇒Bへの持分全部移転登記をします。

遺産分割協議による登記をした後に遺産分割協議をやり直した場合との違いは
法定相続登記を取り消す必要はない。ということです。
理屈としては、Xが亡くなった時点で相続は発生しており、法定相続登記は有効である。です。

遺産分割協議のやり直しにも様々なパターンがあります。
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