相続・遺言コラム

2021.10.27

「相続分の譲渡」ってなんだろう

  • 相続手続き

「相続放棄」や「遺産分割協議」ってテレビとかで割とよく聞くワードだと思います。
一方、「相続分の譲渡」ってあまり聞きなれない言葉かもしれません。
何だろう?
どんな時に使うんだろう?

相続分の譲渡とは

相続分の譲渡とは、「自分の相続分を他の相続人や第三者に譲渡すること」です。
結構そのままの意味です。
有償・無償や全部譲渡・一部譲渡などを選択できるので、
比較的自由度が高い手段です。
そして、相続分の譲渡をすると、譲渡した範囲で相続権を失います。

こんな感じです。

ひろしが亡くなりました。
法定相続分は
1/2 みさえ
1/4 しんのすけ
1/4 ひまわり
ですね。
ひまわりが、みさえに自分の相続分を全部譲渡しました。
すると、、

3/4 みさえ
1/4 しんのすけ
になります。

相続分の譲渡のメリット

相続分の譲渡はいくつかメリットがあります。
その中でも3つのメリットを紹介します。

メリット①「いち抜けた~」になれる

全部譲渡すると、その相続関係から「いち抜けた~」の状態になるので、
様々な面倒ごとに関わらずに済みます。

例えば、

みさえとしんのすけが揉めています。
ひまわりはとにかく関わりたくありません。
その場合、例えばひまわりが自分の相続分を全部みさえにあげると、
ひまわりは、このいざこざから「いち抜けた~」できるのです。

メリット②譲渡する人を選択できる

相続人でも第三者でも、譲渡する人を自由に選択できます。
これは、譲渡する人にとってはメリットですが、
残された相続人にとってはデメリットになる可能性があります。

例えば、

イケメン好きなひまわりは、
イケメン・ウメハラに自分の相続分を全部譲渡することができます。
「イケメンに振り向いてほしい」という不純な動機でも、もちろん問題ありません。
これはひまわりにとってはメリットです。

しかしこの場合、みさえとしんのすけは
突然現れた縁もゆかりもないウメハラとともに遺産分割協議をしなければいけません。
いきなり第三者が遺産分割協議に入ってくるとなると、
トラブルになる可能性がぐっと上がります。
なので、残りの相続人にとってはデメリットです。

みさえとしんのすけの対抗策 民法905条

法律の許しによって遺産分割協議に第三者が入ってたせいで、
うまく話がまとまらない。
なかなか相続手続きが進まない。
当然、法律はこんなことは望んでいません。
なので、こんな時のために別の法律があります。

第905条(相続分の取戻権)
1.共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2.前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。

要するに、、「相応のお金を払って相続関係から出て行ってもらえる」ということです。

実務で、相続分を第三者に譲渡するということはあまりありませんが、
相続分の譲渡がある以上、こういったことも想定されるということです。

メリット③手続きが簡単

相続分の譲渡は、相続放棄と違い、家庭裁判所での手続きが不要です。
そのため、費用も手間もかかりません。

相続放棄と何が違うの?

相続関係から抜けるという意味で、相続放棄と何が違うんだろう?と疑問に感じると思います。
相続分の譲渡と相続放棄はこんなにも違いがあります。

相続分の譲渡 相続放棄
家庭裁判所の手続き 不要 必要
自由度 高い 低い
手続きできる期間 いつでもできる 相続を知ったときから3か月以内
譲渡する相手 譲渡する相手を選択できる 相手を選択できない
(法律で定められた順に相続権が移る)
一部を譲渡・放棄できるか できる できない
対価について 有償無償を選択できる なし

相続登記の注意点

「簡単」とは言いながら、
譲渡の方法によっては、登記が複雑になる可能性があります。
例えばこんなとき


ひろしが亡くなった後、しんのすけが亡くなりました。
数次相続でみさえ、ひまわり、まだ見ぬ子(分かりずらいですが単なる名前です)
が法定相続人になります。
まだ見ぬ子が「ひまわりおばちゃんに相続分をあげたい!」と相続分の譲渡をしました。
この場合、1回で次のような登記をすることはできません。
1/2 みさえ
1/2 ひまわり

数次相続が発生している場合、
まだ見ぬ子が遡ってひまわりに相続分を譲渡していた
ということは認められず、時系列通りの登記が必要なのです。
時系列どおりとは、、こんなかんじです。

1.ひろしが亡くなって、みさえ+しんのすけ+ひまわりが相続する
2.その後しんのすけが亡くなって、まだ見ぬ子が相続する
3.まだ見ぬ子が2で相続した相続分をひまわりに譲渡する

計3回の登記が必要です。

2の相続が発生していないのに3の譲渡は認められない。
ということです。

簡単にできると思っていたけど、話がかわってきますよね。。
当然、手続きが増えるので司法書士の報酬等も変わってきます。

今回の注意点でご紹介した事例のように、
一言で相続登記と言っても、状況が少し変わるだけで
登記の方法や最良の手段が変わってきます。

ふくおか司法書士法人は、相続登記の専門スタッフが多数在籍しており、
複雑な事例もご安心してご相談いただけます。
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