相続・遺言コラム
2023.11.21
買戻特約とその単独抹消申請について
相続登記義務化に向けて、登記申請の負担を少なくしようと様々な改正が行われています。
少し前に掲載したコラム「遺贈の登記が単独申請可能に~相続登記義務化へ向けた動き~」
もそのうちの1つですね。
これと同じような流れで、
令和5年4月1日より買戻特約の抹消も単独申請できるようになっています。
少し前の改正ですが、今日はそもそも買戻特約とは?やその抹消時の単独申請についてまとめてみました。
買戻特約とは
買戻特約は債権担保や転売防止などの目的でつけられているものが多く、
売買のときに抹消する必要があります。
債権担保?転売目的?抹消する必要がある?
何だか大変そうな気がしますが、一体どういうことでしょうか。
まずは買戻特約の条文からみていきます。
民法579条~買戻特約~
買戻特約は民法579条にこんな感じで規定されています。
不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、
買主が支払った代金及び契約の費用を変換してその売買の解除をすることができる
これだけ読むと、ちょっと具体的な状況が想像できませんよね。
不動産を売った人がお金払って買い戻す?どんな状況??って感じです。
買戻特約はどんな場面で使われていた?
具体的にどんな場面で使われていかというと、
例えば、公的機関(住宅供給公社など)が宅地を分譲するときに、
転売防止で買戻特約の登記がつけられている不動産を見かけます。
これは、公的機関が宅地を分譲するときに
「転売しないで自分で住んでね。約束破ったら土地返してもらうからね」
という約束事をして登記をしておくことで、転売を防止しようではないかということなんです。
(バブルのときとかに使われてたみたいです)
他にも担保目的で買戻特約が利用されていたこともあるようですが、
いずれにしても何がまずいかというと「土地返してもらうからね」というところなんです。
何かあったらその不動産を返さなければならない登記が残ってる不動産を購入できないですよね。
なので、買戻特約の登記は然るべきタイミングで抹消する必要があります。
そしてこの抹消登記が、法改正により令和5年4月1日から
単独申請できるようになりました。
買戻特約抹消の単独申請とは
登記申請の原則は「共同申請主義」です。
これは、権利者と義務者双方がきちんと関与して共同で登記申請をしましょうね。というものです。
なので、例えば不動産を売買して所有権移転登記を司法書士がする場合、
権利者(買主)・義務者(売主)どちらからも委任状をもらう必要があります。
一方で単独申請は、
権利者・義務者どちらか一方の関与のみで登記申請をすることができます。
単独申請できる場面は決められていて、
買戻特約の抹消登記申請も一定の要件を満たすと単独申請してOKだよ。と定められています。
では、単独抹消できる一定の要件とはどのようなものなのでしょうか。
単独抹消の要件
ずばり、単独申請できる要件は
「売買契約の日から10年経過していること」です。
他は一切問いません。
単独申請は登記の原則を覆す手段なので、
「相手方の所在が知れないこと」が要件になることが殆どです。
これが結構面倒で、所在が知れないことを証明するために
登記住所宛に郵便物を送ってみたり、
戸籍を調べたり、案件によっては現地に行って確認してみたりといったことが求められることもあります。
そんな中で、この買戻特約抹消の単独申請の要件はただ1つ
「売買契約の日から10年経過していること」です。
この要件さえ満たせば、権利者(所有者)の意思のみで買戻特約の登記を抹消することができます。
何で10年?
これまでの登記制度から考えると結構チャレンジな感じがしますが、
これは買戻特約のルールと関係しています。
買戻特約は民法でこんなふうに定められています。
・その期間は10年を超えることができない
・超えたら10年とする
・伸長できない
・期間を定めなかったときは5年以内に買い戻しをしなければならない
ここから分かることは「何をどうしたって10年を超えることはできない」ということです。
ということは、売買の日から10年経過してる買戻特約は効力がないんです。
なのにこれまでは、その効力がない登記を抹消するのに
相手に連絡をとって委任状もらって、
連絡が取れなければお手紙送って、、
みたいな作業が必要でした。
すごく不経済な感じがしますが、原則通り「共同申請」ってことだったんです。
そこでこの度「売買契約の日から10年経過している」買戻特約については、
所有者の単独申請で抹消できますよーという改正となったのです。
登記のご相談はふくおか司法書士法人へ
今回は買戻特約とその単独抹消についてまとめてみました。
色々書きましたが、ふくおか司法書士法人へご依頼いただければ
内容の確認や書類作成、手配、法務局への提出などすべて対応しています。
不動産の登記のご相談は相続・遺言手続きセンターふくおか司法書士法人へお問合せください。
相続・遺言問題でお悩みの方に
正確で確かな「解決力」を
相続・遺言手続センター福岡は相続問題をワンストップで解決する相続・遺言の専門家集団です。
相続には期限や法的判断の難しい手続きも多く、専門的な知識が必要とする場合があります。相続・遺言の専門家に相談することで大切な資産を守ることにも繋がりますので、早めの対策が望ましいです。
- 遺産相続に関する手続きを一括して任せたい
- 土地や建物の名義変更の手続きをしてほしい
- 相続手続き、何から始めたらいいのか分からない
- 終活として遺言書を作成したい
など、相続問題は置かれている状況に応じて様々。相談者ごとに、一番最適なプランで問題解決に当たります。
私たちは相続・遺言の専門家として、相続問題にお困りのご家族に寄り添い、今後安心した生活を送れるようサポートします。