相続・遺言コラム

2024.04.21

債務者が死亡したらどうする?抵当権債務者変更登記について

  • 登記

お金を借りて不動産に抵当権を付けるというのは割とよくあることです。
今日はこの借りたお金を全て返済する前に、お金を借りた人が亡くなってしまった場合のお話です。

住宅ローンで団信(団体信用生命保険)に加入していれば、
保険会社から金融機関に保険料が支払われ、住宅ローンが完済されます。
なので、後は抵当権を抹消すればいいだけですが、
そもそも住宅ローンじゃなかったり、団信に加入していない場合に
債務者が亡くなったらどうなるのでしょうか。

金銭債務は各相続人が承継する

債務には「可分債務」と「不可分債務」という種類があります。

可分債務

可分債務とは、分けることが可能な債務です。
例えば金銭債務であれば、分けることができますよね。
100万円の借金があって死亡したら相続人2人で50万円ずつ分け合うみたいなイメージです。

不可分債務

不可分債務とは、可分債務の逆で分けることができない債務です。
例えば、自動車を引き渡す債務です。
この自動車って、分割できないですよね。
相続人が2人いたとして、1つの自動車の半分ずつ引き渡すとかできません。
なのでこういった債務のことを不可分債務と言います。

金銭債務は可分債務

お金を借りて不動産に抵当権を付けてお金を借りた人が亡くなった場合、
この借りたお金は可分債務なので、
各相続人が法定相続の割合に応じて当然に承継します。

例えば、突然ですが孫悟空が亡くなりました。
柄にもなく、実は100万円借金していました。
相続人はご存じ、チチ、悟飯、悟天です。
するとこの借金は法定相続の割合に応じて以下のように承継され、
それぞれの責任でそれぞれが返済していくことになります。
チチ:50万円
悟飯:25万円
悟天:25万円

可分債務は遺産分割の対象外

例えば、責任感の強いチチが「悟空さんが作った借金は子供たちには関係ねえ!オラが全部引き受けるだ!」
と言って抵当権の債務者を相続人チチとする遺産分割協議をまとめたとします。

しかし可分債務は遺産分割協議の対象外なので、
勝手に遺産分割協議書とか作って「借金は全部オラが負担する!」
とアピールしても債権者(金融機関)には通用しません。

とは言うものの債権者(金融機関)側からすると、
法定相続どおりに相続されて債務者が複数人になることは、
管理も面倒だし負担も大きくなってしまうのでできれば避けたいところです。
そこで債権者側は「しっかり者で将来有望な悟飯くんが借金を背負うなら遺産分割に賛成しようでありませんか」と話を持ちかけてきました。
そして遺産分割協議を以下のようにまとめました。
「本件抵当権の債務者を相続人悟飯とする」

金融機関の承諾があれば遺産分割OK

本来であれば金銭債権は当然に相続人全員が相続分の割合に応じて相続します。
そして、これは遺産分割の対象外なので勝手に分割協議して誰か1人が借金を背負うということはできません。
しかし債権者(金融機関)側の事情を組んで、金融機関の承諾がある場合に限って
遺産分割協議をすることができます。

なので今回は金融機関の承諾を貰って
債務者を悟飯とすることができるのです。

ここまで抵当権の債務者変更の遺産分割までの流れをご紹介しましたが、
この遺産分割協議で決まった内容にするためにどのような登記申請が必要かご紹介します。

やるべき登記申請

抵当権の債務者が亡くなって、遺産分割協議の結果相続人の1人が債務者になった場合、
相続による抵当権変更登記をします。
「遺産分割協議」ではなく「相続」による抵当権変更なんですよね。
そしてこれは金融機関との共同申請なので、金融機関の協力が必要です。
申請人はこんな感じです。
権利者:金融機関
義務者:不動産の所有者

必要書類

これが結構特殊で、相続による変更登記ですが法務局への

戸籍や遺産分割協議書などの提出は不要です。
また、債権者の承諾は必要ですが、承諾書などを提出する必要もありません
じゃあ相続や債権者の承諾があったことをどうやって証明するのか?というと、
登記原因証明情報に記載します。

・債務者が死亡した年月日
・相続人全員で遺産分割協議をして債務者を相続人の1人にすることとした旨
・これに対して債権者の承諾があった旨

などを登記原因証明情報に記載すればOKです。

他にも、義務者の権利証(登記識別情報)は必要ですが、印鑑証明書の提出は不要です。
一般的に不動産の所有者が義務者になる場合は印鑑証明書が必要なのでこれも特殊です。

法定相続登記が済んでいた場合

因みにですが、
遺産分割協議をする前に法定相続による抵当権変更登記を既にしていた場合でも、
遺産分割協議をして、さらに抵当権変更登記をすることができます

この場合は、「相続」ではなく「遺産分割」による抵当権変更登記をすることになります。

相続のことならふくおか司法書士法人へ

今日ご紹介した抵当権変更登記は、
金融機関と連絡を取り合って金融機関の意向を確認しながら進めることが重要です。
ふくおか司法書士法人では、そんな金融機関とのやり取りなども全て対応しています。
相続登記でお困りの方はふくおか司法書士法人へご相談ください

 

 

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