相続・遺言コラム
2024.04.12
遺言書作成は誰に依頼すべき?
- 生前対策
突然のことで不躾かと思われるかもしれませんが、
大切なことなので先に書きますね。
①不動産を所有している
②遺言書の作成を検討している
①②いずれも当てはまる方は、
是非司法書士へ遺言書作成の依頼をされてください。
「司法書士」です。
理由と事例をご紹介していきます。
不動産所有者が注意すべき遺言書の書き方
早速ですが、父:太郎は不動産を所有しており、推定相続人は妻(花子)と長男(一郎)のみ。
自分が亡くなった後には、この不動産をこんな風に処分してほしいと考えていました。
・不動産は一旦長男:一郎の名義にして、売却については全て一郎にやってほしい ・売却した金額から手数料諸々引いて、残りの金額を妻:花子と長男:一郎で半分ずつ分け合ってほしい |
割とよくありそうな内容ですが、
この希望を実現するために気を付けなければならないポイントがあります。
それは不動産を一旦長男の名義にしてしまいたいうところです。
不動産自体は一旦長男名義にして、
分け合うのはあくまで売却代金の残りの現金ということなんですね。
実はこれ、遺言書の書き方を一歩間違えると
遺言者の希望を叶えることができない遺言書になってしまいます。
遺言者の希望を叶えることができないとは、一体どういう遺言書なのでしょうか。
実例を見ていきます。
希望が叶えられない遺言書
※今回に事例のみにポイントを絞ってかなりざっくり書いていますので、正式に使えるものではありません。
遺言者(太郎)の有する全ての不動産を、一郎に換価させ、諸々の費用を控除した残額を妻(花子)、長男(一郎)に各2分の1の割合で相続させる。 |
これってネットとかで調べると割とよく出てくる遺言書のひな型です。
どうでしょう?この遺言書、一見問題なさそうですよね。
太郎の希望が全て叶えられそうな気がして、
太郎も家族もハッピーな雰囲気が漂ってますが、
実はこの遺言書では太郎の希望を叶えることができないんです。
不動産登記はこうなる
今回のように、相続財産を換価(お金に換えて)して、
その代金を相続人で分け合ってねという内容の遺言書のことを清算型遺贈と言います。
この清算型遺贈の登記申請にはいくつかルールがあります。
①まず法定相続分で相続登記をすること ②次に相続人と買主によって所有権移転登記をすること |
ということは登記の流れはこんな感じになります。
①太郎⇒花子と一郎
②花子、一郎⇒第三者へ売却
その後、売却代金を花子と太郎で分け合う。
「あら?何か思ってたんと違うな、、」となりますよね。
不動産の名義が法定相続人(花子と一郎)になってしまっています。
「え?だって、遺言書に「一郎に換価させ」って書いてあるやん!」
と、一見一郎名義にできそうな雰囲気が漂っていますが、
これはあくまで換価するのが一郎であって、不動産の名義変更について指定していることにはならないんですよね。
これでは、協力してくれない相続人がいると登記申請を進めることができません。
何だか騙されたような気分になりますが、
これが、不動産登記の現実です。
そして、この現実をしっかりと理解しているのが司法書士なんです。
なぜなら、司法書士は不動産登記のプロだからです。
では、これを踏まえてどんな風に遺言書を書けばよかったのでしょうか。
希望が叶えられる遺言書①
①遺言者(太郎)の有する全ての不動産を、換価を目的として長男(一郎)に相続させる。 ②①の換価代金から諸々の費用を控除した残額を妻(花子)と長男(一郎)で法定相続分で分配させる |
これもかなりざっくり書いたものですが、
ポイントは不動産をまず長男に相続させることを明記していることろです。
これをきちんと書いておけば、他の相続人の協力なくして売却までの手続きを進めることができます。
希望が叶えられる遺言書②
遺言者(太郎)の有する全ての不動産を、遺言執行者(一郎)に換価させ、諸々の費用を控除した残額を妻(花子)、長男(一郎)に各2分の1の割合で相続させる。 |
これ、最初の希望が叶えられない遺言書とどこが違うか分かりますか?
そうです、「遺言執行者」を指定しているところが違うんです。
これだと、名義自体は一旦法定相続人全員の名義になるのですが、
遺言執行者を指定することによって、
他の相続人の協力なくして売却までの手続きを進めることができます。
理由は、不動産登記申請の細かいルールと関係しています。
遺言執行者を定めた場合の登記申請
不動産のルールには登記先例や登記研究なるものがあり、
現場の細かいルールについてはこの先例や登記研究に則って手続きを進めていくことがよくあります。
そして清算型遺贈による所有権移転登記にも以下のような重要な先例や登記研究があります。
・遺言執行者を指定した清算型遺贈では、遺言執行者は相続人の法定代理として単独で相続登記申請が可能である
・遺言執行者と買主との共同申請により相続人名義から買主名義への所有権移転登記をすべきである
ここから分かることは、遺言執行者を指定した場合、
相続人の関与なくして売却までの登記申請ができてしまうということです。
では、こんな遺言書があった場合の登記の具体例をご紹介します。
遺言者(太郎)の有する全ての不動産を、遺言執行者(一郎)に換価させ、諸々の費用を控除した残額を妻(花子)、長男(一郎)に各2分の1の割合で相続させる。 |
法定相続人は妻 花子、長男 一郎、次男 二郎の3名、
不動産の買主は五郎とします。
①法定相続人へ相続による所有権移転登記
まず、法定相続人へ相続による所有権移転登記が必要です。
登記申請人:一郎 登記名義:2分の1花子、4分の1一郎、4分の1二郎 登記識別情報:一郎に通知される 必要書類(一部抜粋):法定相続登記なので、太郎の出生から死亡までの戸籍や花子、一郎、二郎の現在戸籍や住民票など |
法定相続分で登記申請するので名義は花子、一郎、二郎になりますが、
登記申請は遺言執行者である一郎が単独でできます。
②売買による所有権移転登記
次に買主である五郎への所有権移転登記が必要です。
登記申請人:五郎、一郎 必要書類(一部抜粋):一郎に通知された登記識別情報、一郎の印鑑証明書など |
これが結構特殊で、遺言執行者である一郎と買主である五郎の共同申請でできるので、
登記名義人である花子、一郎、二郎の協力は一切必要ないんですよね。
一般的な売買による所有権移転登記は、
売主(不動産を失う人)に対する本人確認や意思確認は超厳格で、
本人確認書類や登記識別情報、印鑑証明書を提出が必須です。
登記名義人に何の確認もせずに登記申請をするなんて
司法書士としては身の毛もよだつような話ですが、
これも不動産登記の現実です。
不動産所有者の遺言書作成は司法書士へ
コラムの中で紹介した希望を叶えられない遺言書は、
ネットとかで調べると割とよく出てくる遺言書のひな型です。
これは遺言者の希望とは似て非なるもので、不動産登記の流れは全く異なるものとなってしまいます。
ですが、これを不動産登記に明るくない人が参考にして遺言書を作成してしまって、
遺言者がいざ亡くなったときに残された遺族の方が困ってしまう、、ということがあります。
遺言書は契約書などと違って、遺言者が亡くなった後に効力が発生するものです。
ということは、間違いを取り返せないんですよね。
専門家を選ぶときに様々な判断材料があるかと思いますし、
それぞれの専門家に強みやメリットがあると思いますが、
不動産を所有されている方の遺言書作成は、是非一度ふくおか司法書士法人へご相談ください。
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