相続・遺言コラム

2024.07.22

生前にした相続放棄は有効?

  • 生前対策

例えば父が亡くなる前に、
2人きりの兄弟でこんなやりとりがありました。
弟「僕は父さんの遺産は何もいらないよ。兄さんに全部あげるよ。」
兄「そうか、話の分かるやつだな。じゃあ念のため念書を書いてもらえるか?」
弟「分かったよ、兄さん。書くよ。。」

 

念書
父××の一切財産を相続放棄します。令和4年2月1日
●●●●(弟)

 

さて数か月後、父が亡くなりました。
兄「弟よ、あの日書いた念書がここにある。」
弟「うん、あるね。」
兄「相続登記をする場合はこの遺産分割協議書の提出が必要みたいだ。俺に全部相続させると書いてあるからこれにサインをしてくれ。」
弟「兄さん、それは嫌だよ。」
兄「・・・。」
弟「やっぱり僕も父さんの遺産がほしいんだ。」
兄「まて弟よ、それはよくないぞ。そもそもここに念書があるではないか。」

タイトルの「生前にした相続放棄は有効?」
についてだらだらと会話形式で書いてみましたが、
これ、どんな結末が待っていると思いますか?

生前にした相続放棄は無効

弟「兄さん、相続放棄は生前にできないんだよ。」
兄「・・・。」
弟「だから兄さんが持っている念書は意味がないんだ。さあ、僕にも遺産をおくれ。」
兄「貴様!俺のことを騙したな!訴えてやる!!」

こうなると殆どの場合、
当人同士での解決が望めず
弁護士さんなどに相談に行くというパターンになります。

弟が主張するように、
相続放棄は被相続人の生前にはすることができません。
相続放棄の手続きは、被相続人が亡くなって相続が開始してから
家庭裁判所に対して申立が必要です。

なので、兄はこの念書をもって自分が全て相続するという主張をすることはできません。
では、兄は生前にどんな対策をしていれば自分が全て相続することができたのでしょうか?

遺言書や遺留分の放棄

兄が父の財産を全て相続するには、こんな方法があります。
①父に「全て兄に相続させる」旨の遺言書を残してもらう
②弟に遺留分の放棄の手続きをしてもらう

①父に全て兄に相続させる旨の遺言書を残してもらう

まず、父に「全て兄に相続させる」旨の遺言書を書いてもらいます。
これで万事解決と思いますが、
実はこの遺言書の作成だけでは十分ではありません。
なぜなら、弟には「遺留分」という法律上の権利があるからです。

②弟に遺留分の放棄の手続きをしてもらう

いくら父が「兄に全て相続させる」と遺言書を残していたとしても
弟は遺留分という法律上の権利により、一定の割合で相続することができます。

そこで、遺留分の放棄の申立を家庭裁判所に行い、
裁判所の許可をもらっておく必要があります。

この遺留分の放棄は被相続人の生前にすることができるので、
念書を書いてもらうのではなく
この手続きをしてもらっておけば、父の死後揉めることはなかったですね。

 

相続は「被相続人が亡くなったとき」に開始されます。
しかし相続問題は、生前から長く根深い問題を抱えていることが少なくありません。

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